地球最強のヒーローチームとして名高いアベンジャーズ。しかし活動圏は東海岸が中心です。凶悪犯罪は決して東海岸だけで行われているわけではないのにも関わらず、ヒーローのほとんどは東海岸在住。この問題を解決するために生まれたのがウエストコーストアベンジャーズ、西海岸を守る新たなアベンジャーズです。今回紹介する物語はそんなウエストコーストアベンジャーズの誕生譚。時期としてはちょうどローディらがシリコンバレーへ引っ越した直後と思われます。新アイアンマンとして戦うローディが初めて参加するヒーローチームとはどのようなものでしょうか?
WEST COAST AVENGERS#1
〈あらすじ〉
西海岸に移り住んだホークアイとモッキンバード。新たな拠点で活動する2人は、西海岸にもアベンジャーズが必要だとヴィジョンに協力を求めた。そうしてヴィジョンが招集したメンバーは一癖も二癖もあるメンバーで……? ウエストコーストアベンジャーズアッセンブル! 新たな伝説の始まりだ!
〈新たなるアベンジャーズ〉
かねてより自分のチームを率いたいと希っていたホークアイは、西海岸にもアベンジャーズが必要だと訴えます。妻のモッキンバードは賛成しますが、果たしてどうやってチームを集めるのか? ヴィジョンに掛け合ってみると、試験的にチームを作ってみることに。そこでヴィジョンは西海岸在住のヒーローから最適な人材へ招集をかけます。集まったのは、猫のような敏捷性と虎のような鋭い爪を持つタイグラ、イオンエネルギーの塊で現役のアクション俳優でもあるワンダーマン、鋼鉄の鎧を身に纏うアイアンマン、タイグラの友人で闇を操るシュラウドでした。シュラウド以外の3人は具体的な招集内容を聞かされておらず、いきなり新チームのメンバーになれと言われどこか不満げ。しかしホークアイの意気揚々とした様子を見れば断るものはいませんでした。
左から百発百中の弓の天才ホークアイ、棒術の達人で博士号を持つモッキンバード、シュラウド、アイアンマン、タイグラ、ワンダーマン。癖の強いメンバーをホークアイはまとめあげることが出来るのか?
新アベンジャーズ結成から数日、銀行強盗が現れました。ホークアイの指揮に不満を持つワンダーマンがこれに遭遇、対処に当たりますが、銃弾をも弾く体に苦戦。ブランクを名乗る銀行強盗は、まるで透過素材のような肉体であっという間に逃げてしまいました。銀行強盗1人捕えられない自分への怒りを滲ませるワンダーマン。どうにか単独で捕まえようと意気込みますが、今こそチームの実力を発揮する時でしょう。新アベンジャーズは銀行強盗に味をしめたブランクがもう一度現れると推理、町中で捜索を始めます。ブランクが再び銀行を襲うまでそう時間はかかりませんでした。小賢しい策で警察からは逃れますが、アベンジャーズを誤魔化すことはできません。ブランクを目撃したモッキンバードの連絡であっという間に追い詰めました。
アベンジャーズにより追い詰められたブランク。チームの連携も完璧だ。
しかしこれほど追い詰めてもブランクは間一髪で逃れることに成功しました。命からがら自宅へ戻ったブランク。元々はずる賢いだけの青年でしたが、ある日元スターク社の研究者から盗み出した装置でフォースフィールドを全身に浴び、現在の力を得たのでした。しかしこの装置、再充電をしなければ使えないというちょっとした弱点もありました。西海岸にもアベンジャーズが現れたとなれば、足を洗わなければいずれ痛い目にあうかも……そう考えながらも再充電を始めるブランクに驚くべき出来事が起こります。なんと装置からグラビトンが飛び出してきたのです。グラビトンは重力を操る凶悪なヴィランです。1度はアベンジャーズをも撃退した経験があり、今回もブランクから聞いた新生アベンジャーズ打倒に燃えています。そもそもグラビトンはソーに敗れ、別次元に幽閉されていました。装置の強すぎる力が再びこの世界へと導いたのでしょうか? ブランクを従えたグラビトンは、新アベンジャーズ打倒のために動き始めます。重力は全ての力の源と豪語するグラビトンは、遭遇したワンダーマンらを一瞬で圧倒してしまいました。
重力場でプールの底へ沈められたワンダーマン。C級ヴィランとは強さも格も違う。
ワンダーマンと連絡が取れないことを心配したメンバーは、同じく敗れたタイグラからグラビトンの出現の報せを受けます。グラビトンは数々のヒーローと戦った経験を持つ強敵中の強敵。正面からぶつかってもまともに勝てる相手ではないでしょう。そこでホークアイは奇策を思いつきます。タイグラ、モッキンバードを潜入させ、自らも囮となり、送電線から電力を得たフルパワーのアイアンマンとグラビトンを戦わせるのです。さらにイオンエネルギーの塊であるワンダーマンも超パワーで復活、ついにウエストコーストアベンジャーズとグラビトンの激闘が始まります。
何人たりとも通さない重力バリアで身を守るグラビトン。互いに総力を尽くして戦う。
〈初めてのアベンジャーズ〉
当ブログではこれまでのアイアンマン誌をある程度追っているので、今回はアイアンマン(ローディ)目線で考察していきたい思います。
マーベル史上初の大型クロスオーバー、シークレットウォーズを経験したローディですが、アベンジャーズに参加したのはこれが初めて。当初は自分が「トニー・スタークではない」ことを恐れていました。自分が求められているアイアンマンではないことに怯えていたのです。戦術の天才であるトニーではなく、最近アイアンマンとなったローディは歴戦の勇士に名を連ねるホークアイらにとってはアマチュアでしかありません。しかし中盤、ホークアイはグラビトンを倒す作戦をアイアンマンへ求めました。これにローディは勇気を持って正体を明かし、トニー・スタークではないということを示します。ホークアイはローディの予想通りアマチュアをチームに加えていたことを嘆きます。シークレットウォーズを経験した戦士であることを知りホークアイは自らの態度を改めますが、それでもローディには僅かでもモヤモヤした感情が残ったでしょう。
ローディにとってウエストコーストアベンジャーズは? それまでのローディは、アーウィン博士らの助けもありましたがほとんど1人でヒーロー活動を行っていました。そこへアルコール依存症から復活したトニーが合流、劣等感を募らせてしまいます。アベンジャーズの誘いがあったのはまさにそんな時です。ローディから見れば、少し世界が広がったような感を覚えるでしょう。しかしその世界には自分より遥かに優れた経験と実力を持つヒーロー達。ローディの劣等感が刺激されるのも無理はありません。もしこれがトニーなら……そんな思いを強めてしまう危険があるのです。