アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN DEADLY SOLUTION

ヒーローズリターンで復活したアベンジャーズ。同時に、BIG3をはじめ往年のヒーロー達の個人誌も次々と復活しました。今回紹介するIRON MAN DEADLY SOLUTIONもその1つです。ライターは当時のアベンジャーズ誌を担当していたカート・ビュシーク氏。トニー自身の歴史の転換点にもなっており、ここから読み始めるのも1つでしょう。
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〈あらすじ〉

オンスロートとの戦いから行方不明になっていたトニーが帰ってきた! しかしトニーが帰ってくるまでの間も世界は回っており、今やかつての状況とはまるで違っていた。もはや別世界に近い今、トニーは再び世界の舵を握れるのか?

 

〈トニー・スターク・リターン!〉

行方不明となっていたトニーの帰還。この報せに世界中が歓迎ムードに包まれます。一方、世間の目はトニーの復活以上に注目していることがありました。それはスターク/フジカワ社の行方です。スターク/フジカワ社とは、トニーが生死不明の時にフジカワインダストリーズ社がスターク社を買収合併し誕生した会社です。買収当時のトニーは死亡扱いとなっていたため、この買収劇はあくまで合法。しかしトニーが戸籍上も生存扱いとなった今、スターク/フジカワ社を取り戻すこともまた合法となります。この世界的大企業同士の異例の買収劇、その結末を世間は注目していたのです。恐らく両者が法廷で争えば、トニーが会社を取り戻すことは可能でしょう。しかしトニーはどうしても乗り気にはなりませんでした。この争い自体がどうしても無駄に思えて仕方が無いのです。1人夜道で悩むトニー。しかしトニーの復活は万人が望んでいたことではなかったようです。現れたのは、トニー暗殺の依頼を受けたデス・スクワッドでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220407002757j:image突如トニーを襲撃したデス・スクワッド。大火力の兵器を有した暗殺部隊がトニーの命を狙う。

 

咄嗟の機転を利かせてパワードスーツを着用したトニーは、デス・スクワッドと大立ち回りを演じます。バズーカやミサイルを避けながらリーダーに尋問したトニー。しかし分かったことは、何者かが自分を暗殺するよう仕向けたということだけ。トニーはちらとスターク/フジカワ社を疑いますが、どうやらそれも違うようです。何者かが自分を殺そうとしている。ならばトニーはどうすべきか? 一晩悩んだ結果、ある結論に辿り着きます。まずスターク/フジカワ社との争いを起こさないため、トニーは新たにコンサルティング会社、スターク・ソリューションズを設立。再買収ではなく共存の道を選びました。そしてスターク・ソリューション設立が発表された記者会見で、自分はボディーガードのアイアンマンを除きほぼ無防備状態で行動することを宣言。なんと自身を囮に暗殺者を引き寄せようとしたのです。この記者会見に、世界中で潜むトニーの宿敵達がほくそ笑むこととなりました。
f:id:ELEKINGPIT:20220407004023j:imageスターク・ソリューションズ社設立を発表するトニー。覚悟と決意を含む記者会見だった。

 

そんなスターク・ソリューションズ社最初の仕事は、スイスに住む旧友からの依頼でした。なんでも最近引き継いだ会社の帳簿が不自然だから調査して欲しいとのこと。確かに帳簿には不可解な点がいくつもあります。調査の結果、なんと旧友の会社からある兵器工場の資金が出資されていたのです。友人の会社は製菓を扱う会社のため、当然そんなものに関わるはずがありません。兵器工場へアイアンマンが出向くと、そこは専用の警備部隊に加えドレッドノートまで配備されていました。ドレッドノートはかつてヒドラが開発したスーパーロボット。並大抵の敵ではありません。さらに専門の警備部隊も特殊な技術が用いられたヘルメットを着用、背後に巨大な存在を感じざるを得ません。恐らくはデス・スクワッドを仕向けた人物と同じはず。謎の人物は何故そこまで執拗にトニーを追うのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20220407005214j:imageトニーを襲う3体のドレッドノート。最新アーマーを身に纏うアイアンマンですら苦戦を強いられる強敵。

 

数日後、トニーはスターク/フジカワ社と共同開発したインターネットサービスの発表をするためにカリブ海のリゾート地を訪れていました。そこにはフジカワ会長の孫であるフジカワルミコが。天真爛漫なルミコの振る舞いに戸惑うトニーですが、その時突如巨大な火球が辺りに降り注ぎます。火球の正体はファイヤーブランドの攻撃でした。富豪達への激しい憎悪を抱くファイヤーブランドは、容赦のない攻撃を繰り出します。そして活動停止していた火山へ強大なエネルギーを放射、噴火させてしまいました。文字通り烈火のごとき敵へアイアンマンは大苦戦。まるで生きる炎のような姿のファイヤーブランドは、過去の悲劇的な事件で超高温の体となっていたのです。トニーは超高温の体をコントロールするパワードスーツに、スイスで発見した兵器工場と同じ技術が使われていることに気付きます。ファイヤーブランドもまた謎の黒幕によって送り込まれた存在なのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220407012332j:image大勢の富豪を焼き殺そうと現れたファイヤーブランド。燃え盛る憎悪を持つこの強敵も恐るべき黒幕が送り込んだ刺客だった。

 

翌日、トニーはオーストラリアにいました。なんとブラック・ウィドウが大急ぎで来るよう要請したのです。ナターシャはこの半年間多発する著名な科学者失踪事件の調査をしていました。しかし現状では敵の正体も何もわかりません。そこでトニーには囮になってもらおうと考えたのです。もちろん怪しまれないため、パワードスーツなしで。トニーは不安を覚えながらもナターシャを信頼することに。ところが敵はナターシャより1枚上手でした。トニーへ暗殺者を仕向け、それをナターシャに倒させる間にトニーを誘拐したのです。トニーが連れ出された場所は、大勢の科学者が囚人のごとく働かされていました。しかも作っているものは分かりませんが、ベースとなっているのはスイスで発見した兵器工場と同じもの。やはりここでも謎の人物の影を感じずにはいられません。トニーは服従したふりをしてナターシャへ信号発信、ナターシャはあっという間に救助に現れました。しかしここであっさり逃げられる程度の敵ではありません。施設長のアラオが、不気味な笑みを浮かべながら巨大トカゲに変身したのです。生身の人間では到底叶わないようなパワーにスピード。ナターシャからパワードスーツを受け取ったトニーでも勝てるか分からないほどの相手でした。
f:id:ELEKINGPIT:20220407014650j:imageナターシャ達の前に立ちはだかる巨大トカゲ。トニーは次々と現れる強敵達に大苦戦することに。

 

〈ルミコとトニー〉

今作ではトニーの命を狙う真の黒幕が判明しないモヤモヤとした展開のまま終わってしまいましたが、各エピソードにはそれぞれスカッとする王道ストーリーが用意されている印象でした。さて、そんな本作最大の特徴は、第3期アイアンマン(1998年〜2004年のシリーズ)を象徴するフジカワルミコが登場したことでしょう。ルミコはフジカワインダストリーズ会長の孫で、金銭的には何不自由ない生活を送っています。また日本人でありながら英語をネイティブ・スピーカーのように話していることから、頭のいい人物であることもうかがい知れます。しかしフジカワ会長の古典的な考えにより仕事をさせてもらえず、まさに箱入り娘状態。そんな鬱屈とした日々の中でトニーと出会ったのです。今回はそんなルミコとトニーの出会いについて考えたいと思います。

トニーにとって、ルミコは例えるならシャーロック・ホームズシリーズに登場するアイリーン(イレーネ)・アドラーのような衝撃があったでしょう。それはファイヤーブランドに襲撃された時、アイアンマンとして戦うトニーが偶然ルミコの姿を見た時でした。ルミコは自ら野戦病院を設置し、陣頭指揮を取っていたのでした。これは同じく島に居合わせたローディにも、また他の人物にも出来ないことでした。当初はその奔放な振る舞いからあまり頭の切れる人物ではないと思っていたトニーですが、ここでその考えを改めます。ルミコの野戦病院のおかげで数百の命が助かったのです。戦闘によって生まれる二次三次被害を恐れていたトニーの目線でルミコを見れば、自分以上に島の人々にとってヒーローのような存在だったでしょう。

一方ルミコにとってトニーは、祖父の作った鳥籠から脱するための鍵だったのでしょう。トニーの世間の評判は、もっぱら大金持ちのプレイボーイというものでした。そんな人物と自分がデートでもしたら家族は激昴するだろう。それを分かった上でルミコはトニーをビーチへ誘います。自分は籠に収まるつもりは無いというルミコなりのメッセージだったのかもしれません。かなり機知に富んだルミコとの出会いはこの物語に何をもたらすのか? 今後に注目です。