アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS DARTH VADER DARK VISIONS #3

銀河中が恐れる暗黒卿にして、帝国に絶対の忠誠を誓うダース・ベイダー。悪魔のような数々の行いは、帝国の恐怖政治の代名詞的な存在となりました。しかし、その名を聞いただけで震え上がる帝国将校多い中、ただ1人全く違う感情を持つ者がいました。今回のVISIONSはそんな物語です。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

銀河帝国と反乱同盟軍の戦いは激しさを増していた。そんな時、帝国は遂にデス・スターを完成させる。

デス・スターに配属されたベイダー卿専門の医療チームを待っていたのは、孤独と激務だった。耐え難いストレスに晒された医療チームの看護師は、遂に誰も見た事がない希望を見出す。

しかしそれは、誰もが恐れる希望だった。死を恐れぬ無情な希望なのだ……

 

〈黒衣のナイト……?〉

デス・スターに着艦したベイダー卿を出迎えるストームトルーパー部隊に、奇妙な影がありました。一切の乱れもなくズラリと並んだ白い列の背後、ただ1人ベイダー卿に熱心な目線を送る人物がいたのです。その人物は、ベイダー卿専門の医療チームに属する看護師でした。驚くべきことに、看護師はベイダー卿に恋をしてしまったようです。毎日の激務による疲労や、デス・スターでの孤独な環境は看護師の心にぽっかり穴を開けるようなものでした。しかしそんな時、ミステリアスな雰囲気を漂わせる、誰よりもパワフルなダース・ベイダーへ強く惹かれたのです。誰もが恐怖を抱く存在に恋をしてしまった看護師は、まるで辛く孤独な毎日から抜け出すように、日々を生きる自分を繋ぐように、どんどんベイダー卿へとのめり込んでしまいます。例えば、ベイダー卿の施術後ゴミとして捨てられる体液や破片をコレクションとして徐々に集めたり、ベイダー卿と結ばれる妄想を楽しんだり……少なくとも、その生活に当人なりの花が添えられたかのようでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220729012902j:image月が輝く真夜中に、ただ2人で踊り明かしたい。日々の楽しみだった妄想は際限なくエスカレートしていく。

 

ある日、反乱軍との戦いで傷ついたベイダー卿デス・スターに着艦しました。すぐにでも戦場に戻らなければならないほど激しい戦況にベイダー卿は焦りすら覚えています。しかし応急処置の手術が必要なほどの怪我には逆らえません。ドクターが手術室に到着するまでの間、看護師が施術を担当することとなりました。ベイダー卿が私を必要としている。2人っきりの密室で、互いに互いを求め合っている。そんな妄想と現実の境が曖昧な状況を楽しみながら施術を終えると、看護師は手術台に驚くべきものを発見します。なんとベイダー卿は普段身につけているマントを忘れていってしまったのです。看護師にとってこれは千載一遇のチャンス。秘密のコレクションに加えればどれほどベイダー卿を身近に感じれるでしょう。手術室の掃除も忘れてベイダー卿とダンスする妄想を楽しんでいた看護師。しかし悪いことに、それがドクターに見つかってしまったのです。さらにドクターは看護師の秘密のコレクションまでも発見。これがベイダー卿に見つかっては殺されると考え、処分してしまいました。看護師にとって、それがどれほどのものだったのでしょう。孤独を癒す唯一の希望が無情にも失われたのです。廃棄ダクトを探っても見つからないことに絶望した看護師は、ベイダー卿に助けを求めます。ゴミまみれの体を引きずるように歩き目指したのは、ベイダー卿の瞑想室。無断でその扉を開け、耳元で精一杯の愛を囁きます。返ってきたのは非情な結果のみでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220729014608j:image胸を貫く赤い刃。全ての愛を捧げた結果、暗黒卿ライトセイバーで応えてみせた。

 

ベイダー卿と愛〉

最愛のパドメを失う恐怖に振り回された結果、アナキンはダース・ベイダーへと堕ちて行った。ダース・ベイダー誕生の経緯は今や多くの人が知るところでしょう。そんなベイダー卿は未だパドメを失った後悔と恐怖に囚われており、恐らく死の寸前までパドメのことを忘れなかったことでしょう。ベイダー卿にとって、愛とは即ちパドメに直結するものだったのかもしれません。そんなベイダー卿に愛を囁く人物が現れたのが今作です。全てをパドメに捧げたベイダー卿にとって、赤の他人の愛など煩わしいことこの上なかったことでしょう。ベイダー卿ライトセイバーで応えたのは、ある意味当然の反応と言えます。しかしここで気になることが1つ。ベイダー卿の処刑方法といえば、フォースを使って首を絞めるフォースチョークが有名です。何故看護師の処刑にフォースチョークを使わなかったのでしょうか? 看護師への同情心といった意見も見かけますが、そもそもベイダー卿は看護師の境遇の一切を知りません。知っていたとしても興味がなかったことでしょう。私はただ、ベイダー卿にとってそんな価値もなかったのだと思います。怒りによってフォースが首を絞めるフォースチョークは、即死することなく相手が苦しみながら死んでいくことも特徴の1つ。苦しみ喘ぐ隣で、将校らが震えあがる場面はダース・ベイダーの代名詞的なシーンの1つでしょう。しかしベイダー卿にとって、看護師が苦しみながら死ぬ様子を見ることには特に愉悦も感じないはず。自身に反抗したわけでもないので、その瞬間までただの邪魔な存在でしか無かったのです。だからこそ即死するライトセイバーで殺したのでしょう。しかしそれは、看護師にとって幸運だったと言えるでしょう。気付いた時には死んでいたのですから。