アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

MENU

IRON MAN REVENGE OF MANDARIN

ヒーローズリターンを経て再びアイアンマンとして戦うトニー。しかし謎の暗殺者にその命を狙われる……という展開から第3期アイアンマンはスタートしました。そして今作では、ついにその黒幕が発覚します。ボロボロになりながらも新たな世界で戦い続けるトニーが立ち向かうのは、死んだはずの宿敵でした。
f:id:ELEKINGPIT:20220730084530j:image

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

トニー・スタークが帰ってきた! 市民から熱烈な歓迎を受ける中、しかしそれを快く思わない者も存在した。新会社スタークソリューション設立発表と共に次々と送り込まれる暗殺者。トニーの命を狙う者の正体とは?

 

新自由主義帝国の皇帝〉

絶え間なく現れる暗殺者との戦いで疲労を隠せなくなったトニーは、新たな策を始めます。スターク/フジカワ社へ勉強会という名目で一時スタークソリューションを離れることに。極一部を除き、トニーの居場所すら知らない状態で謎多き黒幕の正体を探ろうとしたのです。それでもウィップラッシュが襲撃するなど全く油断は出来ない状況。気を休める暇もない緊張状態に、トニーはジワジワと追い詰められていました。そんな時、わずかな希望の糸を発見します。謎の黒幕が用いていた暗号文をトニーが独自に解析した結果、その正体が判明したのです。敵の名はマンダリン。かつての戦いで死亡したはずの、長年にわたる宿敵でした。同刻、スタークソリューション本社で留守を預かるペッパーとハッピーは、社内で恐るべきものを発見します。盗聴器です。これまでの捜査も、極秘だったトニーの居場所も、全て敵に筒抜けだったことは火を見るより明らか。恐らく敵の正体に気付いたことも。すぐにトニーへ警告しようと受話器を手に取るペッパー。しかし、既に手遅れでした。敵の正体がマンダリンと知ったトニーはすぐさま行動しようとします。しかしその先にいたのはスパイマスターらが率いる暗殺者集団でした。アーマーの入ったブリーフケースを一瞬で弾かれたトニーに、プロの暗殺者集団と戦う術はありませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220730093159j:imageナターシャの助けで辛うじて一命を取り留めたトニー。しかしその体は、既に瀕死の重傷だった。

 

ナターシャが助けに入ったことでどうにか一命は取り留めますが、一刻も早く病院へ連れていかねばいつ死んでもおかしくない大怪我。それでもトニーは敵と戦うため、アーマーを求めました。素直に自らの非力さを悟ったトニーですが、この事件は自らの手で引導を渡さねばならないと本能的に感じているようです。ナターシャへアベンジャーズに助けを求めるよう頼み、自らはマンダリン調査のため飛び立ちました。頭はハンマーで打ち付けられたような頭痛が響き、喉はしわがれ骨の軋む音さえ聞こえるよう。肋骨はあるはずの場所になく、意識はアーマーの補助があっても朦朧としています。それでも一刻も早くマンダリンを止めねば、恐らくもっと悪いことになる。根拠はありませんがそれだけは確信していました。しばらく後、トニーの予測は予想外の方向で当たることとなります。シベリアを抜けた辺りでしょうか。そこではロシアのヒーローチーム、ウィンターガードが所属不明の軍隊と戦争を繰り広げていました。曰く南方からなんの前触れもなく現れたようで、その目的は恐らく侵略ではないか、ということしか分かっていない様でした。トニーは直感的にマンダリンの仕業だと推理、付近にマンダリンがいるはずだと捜索を開始します。発見したのは、超科学の要塞兵器「ヘブン・オブ・ドラゴン」でした。
f:id:ELEKINGPIT:20220730094659j:imageマンダリンの新たな根城、ヘブン・オブ・ドラゴン。近づくだけでビーム砲が飛んでくる最凶の要塞兵器だ。

 

内部への潜入に成功したトニーを待っていたのは、マンダリンでした。ボロボロのトニーを打ち負かすなどマンダリンには容易く、あっという間に捕らえてしまいます。こうなれば作戦は成功したも同然。マンダリンは今にも死にそうなトニーへ作戦の全容を話し始めます。幾度目かの敗北を喫したマンダリンは、新たな帝国の樹立という野望から発想を転換、この世界に現れた新たな皇帝を目指します。新自由主義を唱える現代、ソビエトは崩壊しロシアも資本主義社会へと移り変わりました。その時の様々な悲劇はここで割愛するとして、マンダリンが目撃したのは新自由主義による資本主義社会の姿はかつての帝国とほとんど変わらないということ。富める者が貧しい者を使役し更なる富を拡大する、肩書きが違うだけの皇帝が乱立する世界です。そしてその世界最大の皇帝こそがトニー・スタークなのです。まずはそんなトニーを殺すことで復讐を果たし、一方で未だ帝国の色香が残るロシアを支配することで富を確立。新自由主義に順応した帝国の樹立を目指したのです。しかしトニーはそれは違うと、命を振り絞って反論します。確かに人を雇い新たな富の追求をしていることは、どの会社でも否めません。しかし同時に、会社には数多くの社員を支えるという義務があること。まず富よりも社員を大切にせねばスターク社は成り立たないことも確かなのです。代表取締役という肩書きは、決して皇帝と同義語ではありません。社員から「労働力」と「時間」を預かる代わりに、対等な利益を分配して生活を支える責任者を意味するのです。誰よりも社員を大切にするトニーだからこそ、新自由主義の皇帝という言葉、そして社員を奴隷同然にみなす考え方に激怒したのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220730100431j:image囚われのトニーと、不敵な笑みでそれを見つめるマンダリン。正反対の2人だからこそ長年戦ってきた。

 

〈「無敵」のアイアンマン〉

多くのヒーローには、冠名とも言うべき2つ名が与えられています。アメイジングスパイダーマンインクレディブル・ハルクマイティ・ソーなどはその代表例と言えるでしょう。そして同様にアイアンマンも冠名を持ちます。それがインビンシブル・アイアンマンです。無敵を意味する言葉です。しかしトニーは多くの戦いで敗北を経験し、今作のように死にかけたことさえありました。重度のアルコール中毒から2度も挫折を味わい、1度はホームレスになったことすらあります。またハルクやソーのように、アベンジャーズの最強格と言われることもありません。では何を持ってアイアンマンは「無敵」なのでしょうか?

トニーに限らず無敵の名を冠するヒーローは多くいます。しかしそれぞれに違う意味が宿り、十人十色の「無敵」があるといっても過言ではありません。それはトニーも同様です。では何が無敵なのか? 最後まで諦めず、不屈の精神で勝つまで戦うこともまたトニーが無敵たる所以でしょう。しかしそれ以上に、トニーは他人に頼ることが出来る、ということが無敵なのではないでしょうか。決してふてぶてしいという意味ではありません。むしろ自分の出来ることと出来ないことを的確に把握し、時には仲間を頼ることで敗北を勝利に塗り替えてきた。頼ることが出来るからこそ、頼られた時も全力を発揮する。仲間と共に勝利し、仲間の勝利を導き続ける。これこそがトニーの無敵だと私は考えます。実際、今作の直前に起きたLive Kree or Die!では仲間に頼ることが出来ず、酒に逃げた結果アベンジャーズを除名されたキャロルが描かれました。仲間を頼れなかったキャロルと、仲間を頼ることで最終的には勝利するトニーがまるで対比的に描かれているよう(実際両作のライターは同じカート・ビュシーク氏です)。そしてトニー自身がボロボロの自分を見て「無敵」の意味を再考するシーンも。今作には、トニーの無敵を「他人に頼ることが出来る」という解釈で描いたものと考えることが出来るのです。