アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS ANNUAL 1999

アベンジャーズというチームに欠かせない人物と聞かれたら、誰と答えるでしょうか? BIG3の名を挙げる人もいれば、ワンダやホークアイなど歴戦の勇士を思い浮かべる方もいるでしょう。しかしジャービスほどアベンジャーズを支え続け、サポートし続けた人物は稀です。気品溢れる物腰柔らかな紳士のジャービスにキャップも尊敬の念を忘れません。今作の主役はそんなジャービス。長年アベンジャーズと共にいた「影のアベンジャー」が対峙する物語とは?
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〈あらすじ〉

ある日突然現れたのは、巨大なアベンジャーズロボ!? 保護を口にしながら無垢な市民を攻撃するロボットに、本家アベンジャーズが黙っているわけにはいかない。だがその背後には、オンスロートの瓦礫から生まれた最悪の「正義」が隠れていた。

 

オンスロートの瓦礫〉

いつものようにテロリストを撃退し、国際平和を守ったアベンジャーズ。しかし新人アベンジャーのジャスティスは、自分がチームの役に立っているのか思い悩んでいる様子でした。憧れ続けた伝説のヒーローチームの一員になったと最初は喜んでいましたが、先程のテロリストを撃退する時も自分のミスで市民を危険に晒すなど詰めの甘さが目立っていました。思い悩むジャスティスの姿にジャービスはかつてのブラック・ウィドウを重ねていました。話はオンスロートを倒した直後に遡ります。強大すぎるオンスロートを倒すため、キャップ、アイアンマン、ソーといった名だたるアベンジャーズが全滅してしまった世界。その犠牲を目の前で見届けたナターシャは、アベンジャーズ存続を決意します。ところが元メンバーや経験豊富なヒーロー達に声をかけても、思うような答えは中々得られませんでした。アベンジャーズがいなくなった今だからこそ、自分たちが守るべきものを全力で守ろうとしていたのです。結局集まったのは、デアデビルハーキュリーズのみ。新たなるアベンジャーズは3人でスタートしようとしていました。しかしここで更なる問題が発生します。元々アベンジャーズのスポンサーはトニーが設立したスターク・ファウンデーションが行っていましたが、フジカワ工業社によるスターク社買収で資金提供が打ち切られ、アベンジャーズ・マンションの所有権を奪われてしまいます。また政府がアベンジャーズは壊滅し、事実上解散したとしてアベンジャーズ憲章を一方的に白紙化。アベンジャーズの犠牲を目の当たりにしながら何も出来なかったせめてもの償いとしてアベンジャーズ存続を訴えたナターシャでしたが、わずか数日で解散せざるを得ませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221027125546j:image力及ばず解散に追い込まれたナターシャのアベンジャーズ。己の無力感に苛まれ続けたナターシャの背中に、ジャービスもまた同じ感を覚えるのだった。

 

舞台は戻って現代。アベンジャーズマンションに緊急警報が鳴り響きます。なんとニューヨークにアベンジャーズを模した巨大ロボット達が現れたというのです。プロテクトレート(保護領)を名乗るそれは、やがて無垢な市民に攻撃を開始。ニューヨーク中へあっという間に悲鳴が響き渡ります。本家アベンジャーズがこれを許せるはずがありません。早速戦い始めるアベンジャーズでしたが、ロボット達の実力は想定以上。更にロボット達はミュータントを認識し、執拗に攻撃しようとします。敵はミュータントに差別的な感情か憎悪を持っている? とはいえこれだけでは敵の正体を特定するヒントにすらなりません。ひとまず目の前の敵に集中。ロボットは達見た目以上にパワフルで、またそれぞれが違う能力を持っています。このままではアベンジャーズが倒されてしまうのも時間の問題です。
f:id:ELEKINGPIT:20221027131227j:image巨大ロボット軍団の猛攻に手も足も出ないアベンジャーズ。敵の正体をも気付かないまま倒されてしまうのか?

 

戦いの様子をニュースで見届けていたジャービスは、敵のあるセリフに聞き覚えがありました。「世界には救世主が必要だ」言ってしまえばありふれた陳腐な言葉ですが、何故かジャービスの耳にこびりついて離れません。もしや犯人はあの人では……? 脳裏にある人物が浮かびながらも確信までは持てないジャービス。キャップには報告せず、友人のツテを頼って自ら捜査することにしました。再び舞台はオンスロートとの戦い直後に戻ります。ナターシャの努力も虚しく解散に追い込まれたアベンジャーズ。資金提供が打ち切られた結果、ジャービスのようにアベンジャーズをサポートし続けた人員は全員路頭へ迷うこととなってしまいました。ファビアン・スタンキーウィッツもその1人。クインジェットの整備士として雇われていたファビアンは、アベンジャーズへ深い尊敬の念をもって仕事に勤しんでいました。しかしオンスロートの1件以降職を失い、ドラッグにまで手を出すほど落ちぶれてしまいました。世界には救世主が、アベンジャーズが必要だ。SHIELDが廃棄したセンチネルの残骸からアベンジャーズを模したロボットを作り上げたファビアンは、CPUを自らの体に接続。その執念はやがてアベンジャーズを殺したオンスロート、そして全てのミュータントに向けられるようになります。
f:id:ELEKINGPIT:20221027165548j:imageジャービスが見つけたのは、変わり果てたファビアンの姿。正義を求めたかつての友は、憎悪を振りまく怪物へと変わり果ててしまった。

 

アベンジャーズたるもの〉

世界には救世主が必要だ。アベンジャーズが。オンスロートとの戦いで壊滅したチームの意思を引き継ぐため、センチネルを改造までしたファビアン。しかしその果てはミュータント差別主義者でしかありませんでした。では同じくアベンジャーズ存続を決意したナターシャや、チームを支え続けたジャービスと何が違っていたのでしょうか?

結論から言ってしまうと、私は信念の差だと思いました。正義を追求するには確固たる軸となる信念が必要です。例えばキャプテン・アメリカは自らの正義に反するならばそのコスチュームを捨て、ノーマッドやキャプテンと別のヒーローの名を名乗りその信念を貫こうとしていました。アイアンマンはその信念を貫くため、涙を流してでも尊敬する親友のキャップと戦い抜きました。各々が持つ絶対に折れない信念。これはナターシャも、そしてジャービスも持っていました。ジャービスはかつてIRON MAN Demon in a bottleにて、酩酊状態で無礼を働くトニーへ辞表を提出していました。誰の元で働くか、誰に忠を尽くすのか、ジャービスなりに軸(=信念)があるのです。そしてその信念からなる正義は、ファビアンに立ち向かう姿からも一目瞭然。しかしファビアンにそれはありませんでした。ファビアンの正義はアベンジャーズという存在。アベンジャーズを模したセンチネルを動かせば栄光のチームと同じ働きができると確信していました。ただがむしゃらに軸も信念もないだけの正義を追い求めてしまったのです。その結果、「敵を倒す」という目標へシフトしてしまいました。アベンジャーズの持つ正義の信念は(多くのヒーローに共通することですが)弱きを助けることなのに。